4.2 分析誤差と不確かさ
誤差は分析結果と真の価との差であると概念的に言われていますが,真の価はどうして分かるのかと言うと,それは物質の融点のように大勢で決めた公定値であったり,元素分析のように分子式と原子量から求めた計算値であったりします.真の価より高い分析値には+の誤差として,低い分析値には−の誤差として表されますが,真の価がないときは勝手に+や−をつけることが出来ません.しかし真の価は無くても分析結果はばらつきを持ったデータ群から取り出した一例ですから,その価のあやふやさは範囲で表すことができます.これが与えられたデータの不確かさで,データのほうから見た真の価のありうる距離を示していて,+や−の表示はしません.ただしこれは余り厳格には守られていないようで,±の表示をするのも見られますが,丁度標準偏差の値に本来不要な±をつける人があるのと似ています.
不確かさもばらつきが原因ですから,統計原理が働きます.不確かさが単純なものであれば,旧来の標準偏差の数値で表せますが,これを新しく標準不確かさstandard uncertaintyと呼び,uで表します.もし不確かさが複数あればu1, u2, ・・・ un が累積し,それぞれの分散の合計として合成分散Zが得られますが,
Z = u12 + u22 +・・・+ un2
これから合成標準不確かさcombined standard uncertainty, ucが求められます.すなわちZの平方根がそれで,
uc = Z1/2 となります.新しい用語が出てきて戸惑うかも知れませんが,従来の標準偏差,分散の考え方と同じですから,古い用語と置き換えればさほど難しい話ではありません.標準偏差が分かっておれば,得られた測定値と真の値の差が不確かさで表現されます.
サンプリングに例をとると,空のボートを測り,試料を載せてもう一度測り,その差をとるので,2回の不確かさが累積しています.はかりの標準不確かさがubとすると試料量の合成分散はZ = 2 ub2となりますから,試料量の標準不確かさはuc = 21/2 ubです.分析結果はそれからいろいろなプロセスを通って与えられるので,実際には複雑な合成要素が絡みあっています.
ここまでの不確かさの見積もりは確率68%で行われましたが,これを確率95%に引き上げると不確かさは2倍の範囲にしなければ納まりません.これを拡張不確かさexpanded uncertaintyと称し,Uで表します.確率を広げる係数は2倍でなくてもよいので,一般的には包括係数kと呼んで,U = k ucで表していますが,普通k = 2で計算されます.これは95%確率で見積もっているので,殆ど全部のデータがこの範囲に入ると考えてよいでしょう.例えばある分析装置のデータが標準偏差0.12%で得られるとき,未知試料の分析値72.15%の不確かさ(普通拡張不確かさを取ります)は0.12×2=0.24%で,真の値は72.15±0.24%の幅の中に95%の確率で存在することを意味します. |